Dear My Friend

オススメ度:★★☆☆☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★★☆



男と女の間に友情はあり得ない。
情熱、敵意、崇拝、恋愛はある。
しかし友情はない。

ちょっぴりお堅い、こんな格言から始まる本作は、「Like」と「Love」の違い、
「Like」から「Love」への過程を描いた学園コメディです。
微妙なお年頃の青少年を、わりと等身大に描けていたのが良かったです。
頭では分かっているけれど、照れ臭かったり、つまらん男のプライドだったり、
意地だったりが邪魔して自分を上手く表現できない。
天邪鬼な、カッコ付けの臆病男っていう主人公像が印象的です。


主人公が極度のヘタレ

攻略キャラが5人いて、どのシナリオも似たような内容になっています。
キャラクターごとに、それぞれ奇抜な設定があるので、
表面的にはちゃんと分岐しているように見えますが、大筋はどれも同じです。
結局、どのシナリオでも、素直に「好き」と言えれば、
"めでたし、めでたし"で終わるところを、鈍い主人公がウダウダ悩んで話を引っ張っているだけです。

恋仲になることで、"恋人関係"より安定している"友達関係"を失うことに尻込みする様を書きたいのは分かりますが、
キャラクター5人ぶんのシナリオを使ってやるには長すぎるし、
何より、微妙にピントがズレているように思えてしょうがありません。

読み手にはすぐ分かることなのですが、
会話の節々に「今のって告白だよな?」と思うやり取りが、何度もあります。
それなのに主人公は、「鈍いフリ」とやらをして自分の気持ちを認めようとしません。
見かねた友人たちが、親切半分、冗談半分でデートをセッティングしてあげたり、
「いまからコイツら公認カップルだからー」とクラスメイトに公認させたりと、
ハッパをかけはするのですが、どれも上手くいきません。

茶化されているように思えて腹が立つ、という気持ちは分かります。
分かるのですが、明らかに相思相愛だろうという状況なのに、
腰が引けたままで、アクションを起こさない主人公に、読んでいる側はイライラするのだと思います。
ピントがズレていると言ったのはそういうことです。
「フラれるかもしれない」からビビるのであって、
100発100中なのが分かっている状況で尻込みするのは、やっぱり変です。
主人公の設定上、彼が色恋沙汰に臆病になるのは理解できますが、
心理描写が行き届いていないため、どうしてもダラダラとした印象を受けてしまいました。

ヒロインの気持ちが、読み手にバレバレなのがマズかったのかもしれません。
読んでいる側が「ひょっとしたらフラれるかも」と思えるような状況で、
主人公が悩んでいたのだとすれば、同じようにウジウジ悩むにしても、共感できる部分も出てきて、面白くなっていたと思います。


ゲームに不向きなシナリオ

麻衣が嫌いな人にとって、本作は地雷ゲーになり得ると思いました。
本作における主人公の"迷い"は、どのキャラクターのシナリオにおいても麻衣がらみだからです。
ところが、全てのプレイヤーにとって麻衣が一番のキャラクターなのかと言えば、それはまず100%ないわけで…。

こういう話は一本道のシナリオですべきです。
特に二周目以降、プレイヤーはCGをコンプするために「○○狙い」でプレイしていることが多いですから、
そこで攻略中のヒロインと麻衣とを並べられても、正直あまり良い反応は期待できないでしょう。
特定のキャラが気に入られていることを前提とした、上手くないシナリオ構成だと思います。
これが恋愛小説なら良かったのですが…。

そういえば、文章もそんな感じで、
一人称なのにライターさんの言葉で語っているように思えて、どこか三人称っぽかった気がします。


総評 B→C

最初にクリアした、麻衣シナリオは非常に良かったです。
一本スジの通った、いまどき珍しいくらいに真面目な恋愛物語だったと思います。
でも、麻衣のシナリオで、やりたいことは全て表現し終えてしまったのか、
他キャラクターのシナリオは、麻衣シナリオのマイナーチェンジのようになってしまっていたのが残念でした。





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