Trample on“Schatten!!” 〜かげふみのうた〜

オススメ度:★★★★☆ / キャラ:★★★★☆ / シナリオ:★★★★☆



謎の生命体「シャッテン」と
シャッテンを倒すためのヒーロー「ゼルクレイダー」の
戦いに巻き込まれてしまった主人公、姫荻愛作。
その彼が自らもゼルクレイダーとなり、
シャッテンとの戦いに身を投じる、というお話。


意味はないけど、面白い

作中でイチバン派手なのは戦闘シーンです。
効果音やBGM、挿入歌、CG投下。あの手この手で必死の盛り上げです。

ただストーリー上の意味を問うと、
戦闘シーンが、イチバン内容の薄いシーンでもあります。
でも、その意味のないのが最高に素晴らしい。
ヒーローものって、きっとそういうものなんでしょう。
必殺技をさけんだり。戦い前に大仰に名乗りをあげたり。
まったく非合理的な演出だけど、そこさえハマれていれば、
変な話、あとのことは大体ゆるせる(笑)。
それが本作の不思議なところです。

このおかしなバランス感が意外に悪くないんですね。
意味がないからこそ、無責任に盛り上がれるし熱くもなれる。
昔のライダーや戦隊モノでいうところのラスト5分くらいがそうでしたが、
カタルシスのためだけのシーン。
いかにもって感じの音楽やセリフまわしは、
なんの根拠もなかったりするのですが、見ていてとても気分が良いです。


実は熱くない

しかし、演出は派手で熱血でも、
バトルもののお約束である、いわゆる「熱い展開」は意外にありません。
それはおそらく、シャッテンに意思がない(ように見える)ことが原因です。

いわゆる名作におおいパターンである、
人間の意志と意思とのぶつかり合いによる「熱さ」はかなり少ないのです。
いちおうシーンとしていくつか用意はされているけれど、
互いに背負うものが軽くて、戦う必然性が感じられないことがほとんどです。
「妹のために」とか「○○ちゃんのために」とか言ったところで、
スケールが小さくて盛り上がりに欠けます。

意思のない相手にぶつける意思はないわけですから、
自然、戦いは内向きな精神論になってしまいます。
演出で盛り上げるも、主人公サイドの内輪な感じが否めません。
こっちが勝手に雄たけび上げて必殺技をぶつけても、
敵であるシャッテンは無言ですからね…。

どうも、シャッテンと戦って勝つことが、
主人公たちが「精神的な壁」をのりこえたことの
象徴のような位置づけになっている気がしますね。

しかし一方で、
友情や恋愛のような平凡なことから、忘れてしまいたいような暗い過去に至るまで、
そうした心の闇みたいなものは、闘うことでは解決できません。
解決の糸口はあくまで日常の中にしかないのです。

こういった状況なので、極端な話、
戦いが始まったときには、ほとんど問題解決済みであることも多いです。
心が不安定なためにゼルクレイダーに変身できなくなる場面もありますが、
逆にいえば、「戦えている=問題解決済み」ともいえます。

水戸黄門で最後に印籠を出して、
ははーぁってなる状況に限りなく近いと思います。
なんとなくお約束でやっていると言いますか。

最初に戦闘シーンの内容が薄いといったのは、
そういう理由からです。


総評 B→C→A

評価はそのまま1部(B)、2部(C)、3部(A)。
第3部のどんでん返しにはワクワクさせられました。
そこからはもう一気読み。
やっぱり最後の戦いも微妙だったけど、でもなぜか悪い気はしてません。

作品の顔つきとして、「熱さ」というのは確実にあるんだけど、
それは本作のメインじゃない、というのがぼくの感想です。
熱いバトルだけなら、もっといくらでも良い作品はありますからね。

リメイクしたエヴァンゲリオンがわりと人気ですが、
あれってみんな、エヴァの戦いだけを目当てには観てませんよね。
登場人物たちの人間模様が面白いから、大人受けも良いわけですし。
その感覚にちょっと近い気がしています。





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