アカイイト

オススメ度:★★★★☆ / システム:★☆☆☆☆ / キャラ:★★★★☆ / シナリオ:★★★☆☆



『アカイイト』は、主人公、羽藤桂が遺産整理のために訪れた母の故郷、経観塚で、
鬼たちの争いに巻き込まれるという和風伝奇ホラー作品です。
彼女には贄の血という特別な血が受け継がれており、鬼たちはその血を求め、襲ってきます。

パソゲーに慣れた身には、プレステ2の低速処理とセーブ数の少なさ(20個しかない)がこたえました。
インストールって素晴らしいシステムだったんですね…。はぁ……。
評価には関係ありませんが。


主人公は落語好きの女の子

主人公、羽藤桂(はとうけい)は、落語と時代劇が大好きな女の子です。
おばあちゃん風のキャラクターとほんわかした雰囲気に癒されました。

いやぁ、こいつがホントの"癒し桂"、ってね。
なんて、こんな感じの親父ギャグすれすれの、可愛らしい駄洒落を一人で言っては悦に入るほのぼのキャラなのです。
ADVの主人公は、ほとんどが男性だから、女性視点の本作は新鮮に思えました。

会話の中にけっこう落語のネタが登場しており、落語が好きであるという設定も活きています。
言葉遊びでヒョイヒョイっと高度な会話のキャッチボールが成立するものだから、読んでいて小気味良いテキストでした。
中でも、エンディングの1つにある『シマイ』というEDタイトルは、なかなか面白かったです。

「それにしても師匠、四枚っていうのはどうにも縁起がよくないねぇ」と、
ENDの直前に桂が四枚をネタにして披露した小噺からの上手いオチになっており大いに笑いました。
お後がよろしくなかったようで、BADエンディングなんですけどね。
双子の姉妹に殺されてお終いです。
いかにもオチらしくて気に入っています。

エンディングの数は全部で34個。
TRUE以外のエンディングも一つ一つ、洒落たのやら真面目なのやら、
それなりのオチが付いており丁寧に作られている印象でした。


良いんだか悪いんだか用語辞典

本作には、難しい単語がたくさん出てくるというので、用語辞典機能がついています。
新しい単語が出るたびに辞書に登録されていき、最終的には250個を越える大ボリュームに成長します。
膨大な単語量に腰が引けそうだけれど、実際のところ、物語を理解するのに必要な単語は数十個ほど。
案外、楽ちんです。
内容は、歴史や神話などに関する豆知識のような真面目な項目から、
キャラクター紹介、果ては、先ほど書きました落語のお題目まで、手広くカバーする便利帳のような感じ。
きちんとライターさんの言葉で解説して、遊んで、ボケているので読んでいて楽しいです。

ただ、単語が登録されるたびに、「メニューを開いて――、用語辞典を開いて――、最新の項目を選択して――」、
と操作が"めんどう"なのがいけません。
ただでさえ登場する用語の数が多いのに、辞典を開く操作に時間がかかるのでは、せっかくのこだわりが台無しです。
250個は思う以上に多い数です。
たとえば、オールクリアに25時間かかったとすると、1時間に十回、6分に一回は、
その"めんどうな操作"を強いられることになります。
これではいくら良い文章を書いたところで、テンポなど一向に良くなるはずがありません。

本文と用語辞典とがケンカしてお互いを殺してしまっており、惜しいことをしています。
一応、重要単語については本文中に解説を織り込んでいることも多く、
用語辞典を開かずとも文脈で理解できるような配慮はあるのですが、あったらどうしても読んでしまいますよ、やっぱり。
用語辞典とはいえ、読めるところを飛ばして読むのは、物語の一部を端折っているようで気持ち悪いですしね。

環境設定で用語辞典を無視する設定が可能ですが…、うーん、どうでしょう。
僕は使いませんね。
というか、誰もOFFになんてしないでしょう。
分からない単語が出てきたら本末転倒ですし。

僕は、本文中の単語から直に解説文まで飛べる機能が欲しかったです。
もしくは、せめて戦闘中や終盤など、集中して読んで欲しい場面くらいは用語辞典が不要なテキストにして、
ここ一番での読書リズムだけでも守ってくれていれば、ハナっから不満は出なかったかもしれません。
いや、本当に惜しい。
手を抜いたのではなくて、頑張りすぎた結果、バランスが…、ってのがなんとも……。


総評 ★★★★☆

こぢんまりとした作品です。
色々に分岐して、色々な結末が見れて。
サウンドノベルとしての面白さは十分なのですが、一個の作品としては、やや散漫にも思えます。
伝奇モノとしては、盛り上がりの最後の一押しが足りない感じです。
読ませる用語辞典だとか気の利いたオチだとか、持続する面白さはあるのだけれど、どうにもキレがいまひとつでした。
キャラクターごとのTRUEエンドに加えて、全てを総括する結末があれば見方は変わっていたかもしれません。

さてさて。
少し微妙な評価に落ち着いてしまった本作ですが、登場人物がほとんど女性で、
主人公が甘えん坊さんなので、百合ぃな見所が盛りだくさんな作品でした。
百合系の萌えゲーをやるような感じでプレイすると劇的に楽しめます。
色々間違っているような気もしますが、なにやら思いがけない満足感のあった作品です。





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