姦染 〜淫欲の連鎖〜

オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★☆☆



感染すると激しい淫欲に支配され、欲望のまま異性を襲うようになる謎のウィルスが突然発生!!
夜の学園で感染者に襲われる映画研究部の部員達!彼らは逃げ延びる事ができるのか?
それとも・・・自らも感染してしまうのか!? (公式HPより)


主人公は普通のアホ男子高生

たとえば主人公が、自分の嫌いな教師が窮地に追い込まれているのを助けるとき。
助ける理由は、隣に好きな女の子がいるから、だったりします。
それも「良い格好するため」ではなくて「嫌われないため」に勇気を振り絞る、というマイナス思考ぶりです。
気取りがないので、読んでいてホッとさせられます。
学校で公然とエロ話をするのもそうだし、好きな娘がいるからといって興味のない部に入部するのもそうです。
いかにも、普通のアホ男子高生という感じで好きですね。

一方で、街の異常に気付いたときに、真っ先に家族の心配をするなど、
生真面目な一面を持っているところには好感を持ちました。
いくら真面目が良いと言っても、助けを呼ぼうとしたときの
「くそっ、こんなことなら校則を守って携帯を家に置いて来るんじゃなかった」というセリフには、
流石に、「こいつアホやん」と、大笑いしましたが。

一概に○○なヤツだとパターン化して決め付けられないほうが、
キャラクターとして面白みがあるように思います。
携帯は家に置いてくるが、エロ本は持ってきて、そのうえ教室で堂々と読んでしまう。
エロ本は堂々と読むが、女の子と話すときには下ネタだのなんだのと、細かいことを気にかける。
これはこれ、あれはあれ、と自分本位な価値観で行動するところが、
馬鹿っぽくて、隙だらけで、読んでいる側としては気楽でした。

女の子が料理に失敗したときに、茶化さず、むしろ気を遣って、
自分から料理に手をつける主人公の対応も見ていて清々しいほどに男前でした。
結局、料理も見た目より旨くて、変なことになりません。
後になってゴミ箱から、調理に失敗した大量の野菜が発見されるのも微笑ましくて良かったです。


緩やかな感染

これまで、変な叫び声や、呻き声、記号の羅列で狂気を表現しようとしている作品は、
嫌というほど見てきましたが、僕は、どれも読み飛ばすだけでした。
たとえば、「あ、がご、げぃいいい(←適当ですが)」などと、意味のわからない奇声を発するとして、
最後に「い」が一個増えようが、減ろうがどうでも良いような"こだわりのなさ"がそうさせていたように思います。
そういった表現は、僕にとって、単なる記号でしかなくて、「ああ、ここは狂った感じを出したいんだな」と、
それだけ理解すれば、一字一句読む必要性を感じなかったのです。

ところが、今回は、見事に読まされました。
カタカナを多く使ったり、「、」でぶつ切りにしたり、少し読みにくいところもありましたが、
きちんと意味のとれる言葉を発していましたし、意味がとれるということは、
読まれることを前提に、書いているということでもあります。
なにより、感染前から感染後、発症までが緩やかで、
日常が非日常へとすり替わっていく様子が刻銘に描かれていたことには、新鮮さを覚えました。
感染すると、初めは書き手の凡ミスかなと思うくらいの、少し違和感を感じるような行動や発言をするようになって、
それが徐々にエスカレートしていくといった塩梅です。
意図的にそのまま流される日常のBGMも、不気味でツボを押さえた演出だったと思います。

滑って笑いになってしまっている部分が多かったのは確かです。
けれども、中には喜劇の内に悲劇を垣間見るような、情感溢れる狂気が描かれる場面もありました。
感染して菌に侵されてしまった主人公とヒロイン、2人のSEXシーンです。
正気を失っているのですが、肌と肌との触れ合いが、
体に微かに残った記憶を呼び起こし、2人は心地よさや安心感を感じます。
まったく予想もしていなかった優しい展開に思わず、ニヤリとしてしまいました。
SEXシーンで感動させられるということは、主人公も含めてキャラクターの感情や思考を、
真正直に人間的に描けていた証拠だと思います。


総評 B

ネタもB級。オチもB級。
けれども、一度クリアすることで、選択肢が増えたり、ピンポイントで別の視点が読めたり、
ノベルゲームの基本をしっかり押さえた作りなので、なかなかに楽しめました。
欲を言えば、2人のヒロインがどちらも助かるルートを作って、
ウィルスの原因究明が出来れば最高でしたが、無いからといって、マイナスにはならない気がします。
ゾンビ映画だって、ゾンビのルーツについて説明はしませんよね。
最初からそういう世界観として話が展開するのが普通です。
まあ、だからこそ、ホラー映画にA級なしと言われてしまうのかもしれませんが……。





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