腐り姫 〜euthanasia〜

オススメ度:★★★★☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★☆☆



「世界の終わり」を「世界が腐る」と表現する、独特の世界観を持った作品です。


雰囲気で読む作品

最初の、蔵女と出逢うシーンで物語に引き込まれるかどうかだと思います。
うすもやのかかった湖で、腰まで水に浸かった主人公と、それを水面に立って見下ろす紅い着物の少女。
この雰囲気に酔えないようでは、この後あまり楽しめないような気がします。

全編に渡って、夢を見ているような幻想的な雰囲気の作風です。
シナリオが何度もループするために、よけいにそう感じました。
ループのせいで、途中から情報が整理できなくなるのですが、それがかえってプラスに働いていましたね。
記憶がごっちゃになったほうが、主人公と同じ目線で物語を読めるという、
単純な理屈なのですが、見せ方が上手いからこそ可能なことだと思います。
重要な部分に関しては、必要になれば、そのつどフォローがあるので、
必死になって読まなくても理解できる配慮があって良かったです。
テキストも安定して上手いから、安心して身を委ねられるというか、
大船に乗った気持ちで、奇妙な物語世界に迷い込んでいくことができました。
直接的な描写を避けて、自然に読み手に理解を促すような文章であるのが印象的です。

ただ、結末までも、ぼやかした書きかたをしているのが、スッキリしなくて残念でした。
結局のところ、記憶を失う以前の主人公はどういう人間だったのか、とか。
断片的な情報が与えられるだけなので、はっきりしたことは輪郭適度にしか分かりません。
主人公のルーツも分からずじまいです。


総評 C

人間の暗部を掘り下げた読み応えのある本筋に腐り姫の伝承。
この辺りを適当に絡めて、小さくまとめてしまったほうが、
上手いオチになったのかもしれません。
終わってみれば、僕が想像していたよりもずっとスケールの大きな話で、
最後にポーンと突き放されたような気もしましたので。
でも、雰囲気が抜群に良い作品なので、
絵とあらすじに興味を惹かれたなら、けっこうオススメできます。






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