けれども、「こう来て、こう来て、次は…、よし、やっぱりこう来たかぁ、
良かった良かった」といったハッピーエンドな流れで、
最後に、わーっと盛り上がって喜ぶキャラクター達を見ていると、
こっちまで嬉しくなって、それなりに納得してしまいました。
いかにも芝居な、クサイ展開ばっかりなんですけどね。
でも、本作の場合、それが良いんです。
描かれるメッセージや関係に嘘がなくて素直だから、
クサイ展開も露骨なキャラ作りも嫌味がなくて、構えず素直に読めます。

物語の先を予想しているつもりが、
知らぬ間にご都合主義な展開を望んでいただけの自分に気がついて、フッと肩の力が抜けて…。
それで思わずニヤリとしてしまう。
終わってみれば、当たり前で退屈でしかなかった「普通」が、
幸せでかけがえのないものだと思えてくるから、これがなかなか面白いのです。


総評 Ｃ→Ｂ

テキストの上手さと、キャラクターごとに用意された別個のシナリオ。
嬉しいクリア後のおまけ。
どれも良いのですが、やはり、普通の学園物であることの限界も感じました。
どんなに上手に書いてみても、やっぱり基本的には面白くないんですよ。
普通だから。

いや、まあ、面白いです。
面白くしてあります。
本来は何の変哲もなくてつまらん話を、上手いこと面白く作品にしたのが本作です。
出発点はさほど面白くないけれど、だんだん感化されて面白く感じてくる仕組みです。

だから、こう言うと身も蓋ふたもありませんが、
最初からフルドライヴで面白い作品と比べると、どうしても劣ります。
僕の場合は、「銀色」だとか「みずいろ」だとか、過去作品からの期待値の貯金があったから、
面白くなってくるところまでモチベーションを維持できましたが、
そうでない人にとってどうなのだろうか、と考えるとなかなかに難しい問題です。
実際そういう人がいたら、僕なら「銀色」や「みずいろ」のほうを勧めてしまうと思います。

なんだか、作り手よりも、読む側の僕のほうで勝手に「みずいろ」と関連付けて、１人で滑った気がしています。
「普通」というキーワードに惑わされましたな…orz