Love Letter
オススメ度:★★★★★ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★☆☆ |
画面から顔を背けたくなるような、悲痛な叫び声とともに表示されるのは、
女が激痛に目を見開いて、手術台の上で仰け反る姿を描いた一枚絵でした。
(死体よりも、死体にされる直前のほうがずっと恐ろしい)
女の悲鳴から逃れるように、イヤホンを耳から遠ざけながら、そんなことを思いました。
手術台に縛り付けられた女が生きたまま解剖される場面でのことです。
そのとき、パニック状態の女とは対照的に犯人の行動は冷静そのものでした。
作中ではここでの犯人を、
『息一つ乱すことなく……まさに教本のように、見事にオペを続ける。』
と表現していますが、まさに、その通りだと思いました。
生きたまま解剖するという、絵的に過激なことをやりながらも、
それを犯人が淡々と作業のごとくこなすことで、得体の知れない恐ろしさが出ていました。
それにしても、初回プレイから2年以上経ちますが、
本作より強烈な殺害シーンは、未だに見たことがありません。
犯人から犯行予告があるたびに、毎回ドキドキものでした。
「今度はなんだ? 何をするんだ??」
「うわー、なんてことを……」
と、思いながらも同時に、
「次はどんな凄いことをするのだろうか?」
と、ごく自然な流れで期待してしまうのが恐ろしく、また、それが本作の面白さでもあります。
主人公は犯人の残虐な行いに憤り、読んでいる僕も当然のことながら共感します。
けれども、「もっと見たい」と感じている自分も確かにいて、
その気持ちは作中の主人公が抱える心の闇と重なる部分でもあるわけで…。
変な話、期待通りに次々と殺人劇を演じてくれる犯人をちょっと好きになってくるんですよ(笑)
複数視点と人間描写
本作は、3つの視点でプレイすることになります。
僕はこの手法が大好きで、複数視点を通して、キャラクター間の共感部分やすれ違いが感じられると、
それだけで感動してしまうこともあるくらいです。
1つの物語をいくつかの角度から見れるのは、ADVの特権だと思います。
作中で、当たり障りのないところだと、瑞穂の誕生日祝いで居酒屋に行くイベントがそうですね。
瑞穂と綾が初めてビールを飲む、という本編とはあまり関係のない、ささやかなイベントです。
主人公視点で読んでいたときは、2人とも良い感じで飲んでいるように思ったのですが、
別視点で読んでみると、どうやらそうではなかったようです。
実は、瑞穂は合わせていただけだと分かり、軽いショックを受けました。
綾が最初に「苦い」と言ったために、瑞穂の「おいしいです」が嘘に聞こえなかったんですね。
まあ、それがどうしたと言われればそれまでなのですが、
こういう人間臭いところを描けているかどうかというのは、
後々、人間味に欠ける犯人を浮き上がらせる意味でも大切だと思います。
総評 B
個人的には、隠れた名作だと思っているのですが、今のところ賛同者は1人もいません。
確かに、粗はたくさんありますし、「……(三点リーダ)」を多用する変な文章だったりするので、
理由は分からんでもないのですが、ジャンルが悪いというのが一番の原因のような気もします。
最後に……。
上記した誕生会イベントですが、クリア後にもう一度見ると結構、感動ものです。
興味を持った方は是非遊んでみてください。