むすんで、ひらいて
オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★☆☆ |
ヒロインは、小泉芳乃、瀬戸内まつり、葛木由奈、シロ、の4人。
基本的には、ナンセンスギャグが連発され、
笑えるだけのくだらない日常が延々と続く平凡な作品ですが、シナリオ構成は真面目な作品のそれ。
最初の2人で伏線を張って、由奈のシナリオで真相に迫り、
シロのシナリオで全てが明らかになる、3段構えのシナリオ構成です。
共通パートがなく、コンパクトにヒロインとの日常をまとめているので、非常に密な印象を受けます。
一般的に、攻略順序が固定になっている作品は、
全体として見たときに冗長になりがちですが、本作の場合は、共通パートがなくて、
個々のシナリオが伏線にもなっていたので、物語の長さのわりにクリア後に疲れはなかったです。
物語の結末も、都合良過ぎず悲し過ぎず、といった具合で綺麗めな終わり方でした。
ツンとデレ
世話焼き妹キャラのオヤシロ様も良いのですが、僕のお気に入りは、
断然、瀬戸内まつりです。まつりは、男勝りキャラで、いわゆるツンデレの一種です。
掃除をサボった主人公を追い掛け回して、ほうきを投げつけたり、
鉄拳制裁を加えたり。卓球勝負で熱い戦いを繰り広げたり。
主人公とまつりの関係は「握手なんて照れくさい。ハイタッチなんて柄じゃない。
俺達にとっては、これ位がちょうどいいのだ。」という、一文に集約されています。
そんな二人が、代わりにするのは「ゲンコツこつん」。
ノックするような形で、拳と拳をコツリと突き合わせるのが二人の友情の証です。
今まで、色々なゲームを通して数多く「近すぎるが故に素直になれない二人」を見てきましたが、
これほどまでに清々しく、分かりやすく、主人公とヒロインの関係を描いた作品はなかったように思います。
さて、この手のヒロインは大抵が「本当は、物凄く女の子らしい」という裏設定があり、
付き合い始めると急にしおらしくなるのが常です。
しかしながら、彼女はちょっと違ってそこが面白いのです。
まつりの場合、基本は「ツン」。
「ツン」が素です。
でも、まつり自身は、女の子らしくなりたい願望を持っていて、その象徴としてゴスロリ趣味が描かれます。
あるとき主人公は、街で偶然、ゴスロリファッションのまつりに出会います。
はじめは、まつりだと気付かなかったものの、
声をかけてみるとやっぱりまつりで、驚いたことにやけにしおらしい。
親友の意外な一面に戸惑いつつも、これがきっかけで主人公は、
今まで異性として意識することのなかったまつりを、女の子として意識するようになります。
ところが、学園にいるときの彼女は、相変わらず男勝りなまま。
付き合い始めて、多少柔らかくなっても、それは変わりません。
そして、ゴスロリ衣装のまつりが見せるしおらしさも、相変わらずなのです。
「ツン」と「デレ」が二重人格のように描かれているのが新鮮でした。
結論としては、ツンもデレもひっくるめて好きなんだ、というありきたりの解答なのですが、
ツンとデレの部分を意図的に乖離させて描くことで、
どちらの彼女が好きなのか分からなくなってしまう主人公の悩みを上手く強調できていたように思います。
ラストに、「握手なんて照れくさくて、ハイタッチなんて柄じゃなかった」
二人の「ゲンコツこつん」を伏線とする、印象的な場面があったことも素晴らしかったです。
こういう心憎い演出は好きですね。
笑顔で拳を突き合わす二人につられて、こっちまで頬が緩んでしまいました。
ん? 緩んだのは頬だけかって??
当然です。
涙腺なんて緩みません。
本当ですよ。
・
・
・
ごめん。
やっぱ、ちょっと緩んだかも。
でも、緩んだだけで、別に感動して泣いたとか、そんなんじゃないんだから、勘違いしないでよね!(笑)
総評 B
処女作としては、なかなか。
少なくとも、次回作が出たらまた、と思わせるだけの作品ではありました。
ただ、シナリオの不完全さを予感させるような選択肢があったことに、読み手としては不安を感じます。
前半、シロに女の子の好みを聞かれる場面で、
・芳野
・まつり
・年下が好き
・年上が好き
という選択肢がありました。
芳野とまつりはOK。
年下は、由奈ですから分かります。
じゃあ年上って誰でしょう??
そりゃあ、年齢不詳の小言が趣味な学生寮の美人管理人さんに決まっています。
でも、攻略は出来ません。
まさか、シロは神様だから年上にカウントされるなんてオチではないはずです。
……追加パッチに期待しましょうかのぅ(まあ、無理だろうけど...orz)