Noel

オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★★☆ / シナリオ:★★★☆☆



「Noel」は、死神と呼ばれる凄腕の女エージェント、ノエルが女学園に潜入して、
大企業の令嬢を秘密裏に護衛するというお話です。
ストーリーは、この設定を聞いて誰もが期待する内容。
日常部分はコメディで、戦闘は女性らしい身のこなしで最高に格好良くて。
冷徹なエージェントだったノエルが、ヒロインと学園生活をおくる中で、
徐々に普通の女の子としての一面を取り戻していきます。


ただ…

嘘臭いのだけが気になりました。
子供がごっこ遊びをするときに即興で作る設定のようで、リアリティがないのがいけません。

たとえば、主人公の所属する組織「エマノン」。
優秀、優秀とそればっかりで、どれだけ優秀なのかが具体的に伝わってきません。
現実で、一般人が軍隊に対して感じている距離感と大差なくて、
リアリティが不足しているように感じました。
印象に残っているのは「よく分からんが、とりあえず、
優秀な人員が多くいる組織らしい」ということだけです。

死神と恐れられているわりには、主人公も強いんだか弱いんだか、よく分かりません。
結果だけ見れば強いのは一目瞭然ですが、テキストを読んでいる最中の感覚では、
雑魚敵にいつ撃たれてもおかしくないような危なっかしい印象です。
漫画的なサービスというか、ノエルの強さをひけらかすためだけのイベントを一個。
初めのほうに作ってもらえると嬉しかったですね。

これは僕の勝手な嗜好ですが、戦闘描写は出来る限り余裕を持って読みたいです。
もちろんハラハラ、ドキドキするような危うい展開も必要ですが、
心の隅で主人公の勝ちをイメージしながら読んでいたいというか…。
「今は苦戦しているけれど、こいつの実力はこんなもんじゃないぞ」という。
泥臭くて不恰好で、最初から最後まで辛勝している印象しかないのが、
不満足の原因ではないかと思っています。

組織の描写は嘘臭いのに、
戦闘になると途端に都合良く回らなくなるというバランスの悪さがいけませんね。
本作はもっとポップで軽いエンタメな路線でよかったと思います。
戦闘だけ泥臭くされても、そこへ行き着くまでの世界観を表現するところで、
既に僕はそんなリアルで渋いのは期待していなかったのです。


変なキャラが多すぎ

チグハグなことは他にもありました。
世界観の緩さに反して厳しい戦闘描写をする本作ですが、
肝心の敵がこれまた緩かったです。ノエルvs双子の美少女、とか。
敵も味方も美少女だらけで、そのくせ血はどんどん流れて血なまぐさくて、
緊張の基準をどこに置けば良いかで相当に混乱しました。
描写そのものは、どちらかと言えばグロい部類に入るのだけれど、
絵面が可愛らしいせいで違和感を感じてしまいます。

敵の女幹部とやり手の刑事も、正直言って、かなりしんどいキャラクターでした。
外連味あふれるセリフ回しで、ギャグになってしまっています。
ほのぼの日常パートに登場する委員会会長が芝居がかっている分には、いくらやってもらっても構いません。
そういうお約束にニヤニヤするのも楽しみですから、どんどんやってもらいたいと思います。

でも、シリアスな場面でやられると、もうダメですね。
どうしても子供向けアニメを見るような目で見てしまいます。
絵の可愛さも手伝ってソフトな印象しか持てません。
少なくとも、これから命の取り合いをするという空気は感じられませんでした。


総評 D

ノエルが自らの選択に悔いるシーンがあります。
でも、その選択というのが実はプレイヤーの選択肢で。
皮肉にももう一方の選択肢は、ノエルの死が結末のBADENDに繋がっているのだから堪りません。

こういう緊張感をもっと大事にして書いていって欲しかったです。
構図や設定は面白かったのですが、膨らまし方を間違えた感じですね。


余談(ネタバレにつき反転してます)
最後のシーンには飽きれました。
前の場面でノエルは、どう考えても死ぬだろうという状況なのにEDでは一転して元気一杯。
いくらなんでも、そりゃないでしょう。
そんなにハッピーEDにしたければ、初めからそう書けばいいんですよ。
直前で悲惨な終わらせ方をする意味がまったく感じられません。
お優しいテンションで行くのかシビアにいくのか、
書き手が最後まで決めかねていたような中途半端さがいけませんでした。

もしできることなら同じ設定で、フルメタルパニックの学園編のようにコメディにしたのを読んでみたいですね。
ヒロインに振り回される主人公となんだか気の抜けた悪役。
だらしない刑事。お嬢様然とした委員会会長。
絶対面白いですよ。






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