神樹の館

オススメ度:★★★★☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★★☆



『神樹の館』は、主人公「工月秋成」が論文の資料を集めるために、
学友の「麻子」と山奥の洋館「真珠邸」を訪れ、
館に滞在するうちに様々な怪異に巻き込まれていくというお話です。


純文学テイストな文体

なんて読むんだろう?

難しい漢字が多くて、何度も何度も、つまづきながらのプレイでした。
前後の文脈と字面で想像はつくのですが、それだと中途半端な気がして、
いちいち辞書で引いてしまったのは正解だったのか間違いだったのか……。
結局、最後まで、辞書と首っ引きで読むことになりました。
純文学など、昔の小説を読みなれている人でもない限り、
完全にスムーズに読むことは難しい文章だと感じました。

ゲームの雰囲気に合った文体だったとは思います。
三度の飯より本が好きな本の虫の主人公に、古風な館、そこに住まう人々の歴史。
僕は、Circusの『終の館』シリーズやPILの『女郎蜘蛛』など
「館モノといえば古風な文章だろう」という思い込みがあったこともあり、わりと素直に納得できました。


不思議を楽しむ。雰囲気を味わう。

館モノでも二種類あって、黒幕、と言うとおかしいかもしれませんが、
生身の人間が主導になっており、不思議にある程度説明のつくタイプの物語と、
逆に、人外の存在が裏で糸を引いているような、不思議が不思議のままになっているタイプの物語があります。

本作は後者で、序盤から、謎、謎、謎、と積極的に「不思議な館、真珠邸」を強調しており、
ゲームを進めるほどに、不可思議で奇妙な世界に迷い込まされます。
だからなのか、全てが終わってみるとどうも記憶があやふやで、
これだ、と特定のシーンを思い出すことができませんでした。
言い回しはベタですが、夢から覚めたような心地です。


総評 B

あやふやな記憶の中で、唯一、印象に残ったのが、最初に読んだ双子のシナリオです。
不思議のカラクリをタネ明かしすると同時に、軽快なBGMが流れ、
タネと演出に呆気にとられたプレイヤーを置き去りにしての鮮やかな閉幕。
やたらと「化かされた」気がして、居心地悪くも痛快な結末でした。

口先では「オチから話を作ってるなぁ」と、
斜に構えつつも、本心では演出の妙に感心しきりでした。





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