本作は各ヒロインのルートで伏線を張って、
クリア後追加されるＴＲＵＥシナリオで伏線が全て回収される構造。
複雑な構成ながら、妙な気負いを感じさせず分かりやすい内容になっているのには感心しました。

ただ、面白いつまらんの話になるとしんどい作品ではあります。
テーマにそってきちんと書かれていて、作者の言わんとすることもよく分かるんです。
でも、主人公が最初に言ったように鬱陶しい性格なので、
気持ちよく読めない展開が多くて、娯楽としてはちょっと失敗している印象の作品です。


ヘタレ主人公と読めすぎる展開

主人公が淡々と幼馴染の好意を無視する姿は、見ていて辛いものがありました。
自分の目線で読みたいと思うプレイヤーほど、ストレスを感じてイライラする展開が多そうです。
「こんな可愛い娘が好いてくれてるのにオマエは何やってんだ馬鹿野郎！」と。
こうなると、もう感情移入どころではありませんから、
これが原因で「つまらん」と思う人がいてもちっとも不思議じゃありません。
あくまで「作品」として真面目に？　読むのでなければ、
あんまり面白い内容ではないだろうと思いました。

かと言って、シナリオが滅茶苦茶すごいかと言われればそうでもありません。
簡単に予想のつくオチとストーリーです。
カンの良い人なら設定を眺めただけで「もしかして…」と先読みできる話でしょう。
僕もそこまでではないにせよ、
２、３キャラ攻略した頃にはもうほとんどオチが予想できていて、
最後までやってみたら予想通りでした。
予想が見事に当たって違う意味で楽しんでしまった僕はともかく、
普通に物語を楽しみたい人にとってみればこんなのは残念なだけですよね。


総評 Ｂ

絵がキレイで、話もまとまっていて。
でも、主人公のウジウジでちょっとマイナス。
ざっくり書くと、こんな感じの作品です。

僕は同じメーカーさんなら、前作の「ゆきうた」のほうが好きですね。
本作のオチが漫画的で締りがよくないのに対して「ゆきうた」はどことなく童話っぽくて、
同じファンタジーでも話に真剣味がありました。


余談

親友の目の前でＳＥＸするシーンは無理過ぎました。
最後のほうで慌てて二度、三度と詰め込んでいるのも、ストーリーの妨げになって損をしています。

本作に限ったことではありませんが、
僕としては無理して話のなかにＨを入れて貰わなくても構いません。
特に、本作のように感動させるのが狙いの「作品」の場合。
どうしても必要なら、クリア後のオマケとして別に用意してもらえると助かります。
いい加減、エロという要素が、作る側にとって選択肢の１つになっても良い頃だと思うんですけどね…。

それに、どうしてもエロが必要な人は本作みたいな清純派の作品は無視して、
もっとそれらしいのを買うと思うし（笑）