天使のいない12月

オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★★☆ / シナリオ:★★★★☆



「コイツ、すかしてやがんな」

このゲームの主人公を見て、まず一番に思ったのはこれでした。
授業をサボって屋上でタバコを吸って…。
立ち昇る紫煙を眺めながらたそがれて……。
それで、自分は物を分かっていると勘違いしているんですね。
教室でおとなしく授業を受けているヤツらと俺は違う。
俺は特別なんだと。

初っ端から、キツイなぁと思いました。
こういう勘違い男は苦手なんですよ…。


鬱ゲーじゃなくて、ただ主人公が鬱なだけ

上に書いたような主人公なので、僕の場合、
主人公に感情移入どころか、一片の共感すらできませんでした。
じゃあ、ヒロインに感情移入できるか? 同情できるか? と言われてもあまり…。
鬱ゲーなんて、外から眺めていてもしんどいだけです。
一緒になって沈み込んで、ドンヨリするのが気持ち良いわけだから(笑)


設定が軽い

これは物理的な意味ではなくて、感覚的なことです。
このゲームは、主人公の性格や主人公を通して見る世界が、
やたらと"軽薄"に感じられます。
それだけに、ヒロイン達に"実はこれこれこういう過去があったんだ"とわかっても、
イマイチ心に響いてきません。
へっ? それだけ?? ってなもんです。
それがどうした、とさえ思いました。
もうどうしようもない世界観なんですよ。
主人公は無気力で活力がなくて、世界に対して否定的ですから、
不幸も幸福も重みをなくしてしまってるんですね。

まあ、そうは言っても、もちろん全面否定するわけではなくて、
掘り下げがしっかりしていれば、この路線でも面白い部分はあっただろうとは思います。
たとえば、キャラクターが現在に至るまでの経緯を、もっとねちっこく書くとか。
経緯がわからない状態のまま、ヒロインの不幸でちょっと頭のオカシイ現状を見せられても、
心の底から湧きあがって来る感情は極僅かです。


総評 D

仲良くなる→つきあう→SEX。
という純愛パターンをひっくり返して描いたのが、本作の面白いところです。
でも、全ては、過剰な「最近の若者」描写のせいで台無しでした。

作中では、既存の恋愛ADVへ当てつけるように、擦れた描写をしたり、
SEXという単語を多様したりしていました。
たしかに、既存のお優しい作品が、現実と比べてぬるま湯なのは分かります。
でも、それにしたって、いくらなんでもここまでは酷くないでしょう。
底辺の部分を、さも一般のことのように書いているのが、作意的で好きになれませんでした。

若者にビビッているオッサンの視点はもう見飽きたよ、ということですね。
読んでいると作者に対して、若者はみんな無気力でSEXにしか興味がないんかよ、
と言いたくなります。
こういう、すかした感じの作品を見ると非常に疲れます。

リアルさを演出しようとしたのは理解できます。
できるのですが、やり過ぎた結果、嘘になってしまっています。
それがとても残念でした。





inserted by FC2 system