天使憑きの少女 〜Related with ”Present for you”〜
オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★☆☆ / シナリオ:★★★★☆ |
1章で、医療ミスをおかした医者に復讐するために、主人公が手にする拳銃はナイフでも十分です。
他にも、魂の寿命は約7年などという設定は、天使や奇跡を無理に出すから出来ただけの設定にも思えます。
奇跡が必要だったのは、臓器移植の拒絶反応が起こらないようにする場面くらいではないでしょうか。
それこそ"普通"の奇跡で良いだろうと思いますけどね。
けれども、僕は本作の「不要な奇跡」が気に入っています。
奇跡を補助的に使うやり方に新鮮さを覚えました。
ナイフを拳銃に置き換えるだけで、血塗られた復讐が、途端に軽薄で陳腐な印象になります。
復讐の無意味さを描くには、ちょうど良いように思いました。
ひょっとしたら、「母の仇!!」と、
時代劇になってしまうのをおそれて拳銃にしたのかもしれませんが(笑)
あと、さきほど書いた、臓器移植の場面。
臓器の適合をファンタジックな奇跡として描くことで、現実の臓器移植が、
どれほど奇跡的で運命的なものであるかが強調されていました。
不謹慎ですが、浪漫を感じます。
脳死に希望が見出せた心地です。
死して美少女と融合できるチャンスだぜ!!
と書いておけば、オタクのドナーカード所持率が増加するかもしれないので一応書いてみます。
まあ、実際は、おっさんと一体化する確率のほうが遥かに高いのですがね…。
それ以前の問題として、オタクは不健康者が多いから、提供したくてもできない可能性もありますが……。
一つだけ…
脳死状態の人間を置き去りにして、臓器移植は、悪だの正義だのと議論が交わされます。
「人を犠牲にしてまで生きていたくない!」とかなんとか、お決まりの展開もあります。
しかし、臓器提供は本人の意思であるという一点だけは揺るぎません。
この事実に気付いたとき、少し夜風に当たりたくなりました。
つまり、ちょっと感動しました。
ドナーカードの素晴らしさに。
なんて冗談はさて置き、僕は、こういう高潔な精神に弱いようです。
それだけに、本作の、ドナーと患者を引き合わせるシーンには、納得できないものがあります。
作中では、天使の助けを借り、精神世界のような空間を通じて、
ドナーと患者の2人はいとも簡単に通じ合えてしまいます。
せっかく今まで、テーマについて真正面から真摯に語ってきたのに、
最後の最後で作者のエゴを押し付けられた気がして、冷めてしまいました。
結局のところ、脳死してしまったドナーにはドナーカード以外に自分の意思を伝えられる手段はないわけです。
であれば、ドナーの存在を知った患者が、悩み苦しみする中で、
気持ちの整理をつけて手術に望む姿を描くべきでした。
だから、たとえ仮想の空間でのやり取りであったとしても、
結果的にドナーの命を奪うことになる患者がドナー本人から赦されてはいけないのだと思います。
そこだけが、いまいち納得いきませんでした。
総評 B
百合ぃHは最初だけかい…orz
百合キャラな柴田君に、過剰な期待を寄せつつプレイしていたので、
Hイベントに関しては、少し拍子抜けでした。
と、それはさておき、内容がクソ真面目なせいで、
Hシーンがものすごく浮いていたことを除けば、なかなかの作品でした。
ちなみに、本作は『Present for you』という作品の続編だそうですが、
プレイしていなくても不都合はなかったです。
本作に登場した天使が、『Present for you』にも出ているらしいのですが、
詳しいことはよく分かりません。
なんだか「続編」として売り出すことで損をしているような気もします。
これだけで十分面白いのに。