夜明け前より瑠璃色な

オススメ度:★★★☆☆ / キャラ:★★★★☆ / シナリオ:★★★★☆



ついにオーガストが苦手なシナリオの克服に向けて動き出しました。
でも、まだまだ改善するべきところは多くあるようです。


予想外に…

プレイ開始すると、すぐに感じました。
帰ってきたなぁ、と。
キャラも絵も雰囲気も「いつものやつ」なんですね。
馴染みの店に来た安心感があります。
ちょっと変てこな舞台設定で、ご近所さんとは仲よく、アットホームな雰囲気。
純愛。Hはきっちり書く、と。

今回は+αでTRUEシナリオもついてきます。
これは、ちょっと面白かったですね。
正直なところ、個別ルートのだらだら日常が過ぎていく感じには飽いてきていたので、
僕は「何か新しいことをやる」というだけで嬉しかったです。

さて、肝心のTRUEシナリオ。
内容はフィーナ姫の個別ルートの続きになります。
地球では、二人の関係を認めてもらえたけれども、月では……、といったお話。
この流れに、他の要素が絡んでくるのが面白いです。
主人公の父親についてのエピソードが物語に深く関わってきます。

「親父は行方不明」

という設定だけ残して、個別のシナリオで語られないまま終わっていたので、
いつも通りスルーかな、と思っていたら、良い意味で期待を裏切ってくれました。
最初、オーガストが動き出した、と書いたのはそういう意味です。

ネタバレしない程度に内容にふれますと…。
王妃としての母しか知らなかったフィーナは、本当の母の姿を知るために、
生前に母親が探していた「何か」を見つけようとします。
そして、フィーナに同行するうちに、主人公もまた、
父親が失踪する以前に「何を」していたのか徐々に理解していく、という展開です。

話の先も「見えそうで見えない」作りになっていて、読み進めるうちに考えが二転三転させられます。
まさかオーガストのゲームで、ワクワクすることになるとは思いもしませんでした。

そして、これだけの変化を持たせつつも、従来のオーガストのスタイルは少しも崩していません。
これはすごく大変なことだと思います。


熱暴走する主人公

悲しいことですが、良い部分が目につき出すと、悪い部分も色々と見えてくるものです。
本作では、「萌えゲーにしては濃いエロ」という
オーガストのセールスポイントがアダになっていたように思います。

時と場合を考えずに、「もう我慢できそうにない♪」とか何とか調子の良いことを言って、
股間を押し付ける主人公に怒りを通り越して呆れてしまいました。
別に、家族に聞こえる、外は恥ずかしい、とか、そういう話をするつもりはありません。
個人的には、声を大にして言いたいところですが、
シチュエーションの一つとして押さえておきたいという気持ちは分かりますから。
それについては、僕も納得です。
でも、いくらなんでもナシだろう、という状況でのHもあったと思います。

一つめは、博物館で姉さんの仕事中にH。
「バレたら姉さんクビやがな」と思わずツッコミを入れてしまいました。
ご丁寧に、ちゃんとネタ振りまであります。
このHイベントにたどり着く前に、姉さんが、
どれだけ博物館の仕事に一生懸命かというのを、ずっと描いてきているんです。
主人公も、「早く一人前になって姉さんを支えたい」、
なんて格好良いことを言ってくれてるわけですよ。
それが、ふたを開けてみれば、この有様です。
プレイヤーを馬鹿にしているのか、単なるオーガスト流のボケなのか…。

これだけじゃありません。
二つめは、お姫様と学園でH。
国王に二人の関係を認めてもらうやら、政治の話が出てきたりと、
そういう緊迫した状況でやるかよ、という話です。
普通にスキャンダルですよ。
一国の姫が神聖な学び舎でSEXなんて…。
えっ? 硬いこと言うなって??
なら、オマエ(主人公)は、せっかくの良いシーンで硬くするなよ、と言いたい。
言えるものなら。
Hイベントだけ種馬も顔負けの馬力を発揮する主人公には最高に腹がたちました。
重要な局面でのヘタレ具合と相まって、主人公の印象は最悪です。

僕は、こういう空気の読めないHシーンがあると非常にイライラします。
作り手の意図はわかりませんが、
一応、プレイヤーが喜ぶと思うから用意されているシーンなわけでしょう?
信じられませんね。
これに、Goサイン出した人間の神経を疑います。

もしかして、「まってました♪」とばかりにパンツを脱いでちり紙を用意するのが普通なんでしょうか?
これは、レビューを始めた頃から、ずっと抱えている大きな疑問です。
僕は「セクシードラマ」くらいの感じで遊んでいるので、
無理して入れているサービスHがイマイチ理解できないんですよ。
いつも、「もうちょっと上手いことやれよ」って思うだけです。

ここのところの人口比は是非とも知りたいですね。
エロが必要派と不要派は、実際、どちらが多いのか気になるところです。

でもまぁ、AVを借りて絡みの前にある申し訳程度のドラマが
延々続くだけの内容だったら、キレますわな(笑)
そう考えると、ちょっと分かるかもしれません(^^;


どこまで考えて物を書いているのか?

本作は、安易な文章表現が目につきました。
たとえば、主人公が自らを「俺は思春期のガキか!」と叱咤する場面。
プレイヤーからすれば「いやいや、オマエ思春期やんけ」となります。
こういうセリフは、もう少し年上の男が使う言葉であって、
高校3年生の主人公が使う言葉ではありません。
彼は間違いなく思春期真っ盛りですよ。
それは、彼の歯止めの効かない性欲が証明していると言えるでしょう(笑)
「我慢できない」って…。
精神的、早漏野郎ですよ、コイツは。

オーガストの作品は、今まで欠かさず遊んできましたが、確かにいつも文章は読みやすいです。
格好つけたのがまるわかりの滑ったテキストなんて一文もありません。
でも、ちゃんと意味を理解して書いているのか疑問に思うことがあります。
僕にはノリで書いているように思えて仕方がないです。
ノリでなんとなくサラサラッと書いてしまうから、
自然と「ベタベタ」な展開が増えるのではないでしょうか?
ライターさんは、もっと主人公の目線で書いていかないといけませんね。
そうすれば、もともと設定は変わっているのだから、話は自然とベタから離れていくでしょう。

本作で言えば、月から「お姫様」が留学に来ている、という設定。
これをもっと積極的に使って欲しかったです。
たとえば、同じことの繰り返しになっている朝食風景や
トラットリア左門での夕食イベントを減らして、代わりに学園でのエピソードを増やすとか。
本作にあるイベントでは「月から来た」という部分ばかりが強調されて、
「お姫様」の部分があまり前に出ていなかった印象があります。

月にはない食材、月には海がない、月にはいない生き物…。

僕は、どちらかと言えば、

「月にある食材かどうか以前に、
そもそも姫様は一般庶民と食ってる物が違うんじゃ?」

と、疑問に思うわけで……。
でも、本作では、「月と比べて地球は」という視点しかありません。
ミアとフィーナを「月から来た人」と一括りにしてしまっています。
ところが、結局のところ、最後に問題となるのは「月」じゃなくて
「姫様付きのメイド」であることと、「お姫様」であることなのです。
だったら、普段のイベントにもう一工夫欲しいじゃないですか。


総評 B

個別のシナリオをプレイしているときは、「あぁ、またか」と、
あまりに変化のなさすぎる作風に疲れたりもしたのですが、TRUEシナリオをプレイして評価は随分変わりました。
ただ、本音を言えば、全てのルートでその質を維持してもらいたかったですね。
個別シナリオをプレイする時間のほうが圧倒的に長いですから。


最後に一言…(ネタバレ)

死なせてしまった犬のために獣医になるのだと思いきや、
実は主人公のためでもあったという、菜月シナリオ。
僕が主人公の立場なら、嬉しいけど手放して喜べないなぁ……。
あのオチだけは、よけいな捻りだったように思います。
単純に、「死んでしまった犬のために」っていう素直な動機のほうが、
僕なら嬉しいですね
(←ココマデ)





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